外国人の入国要件及び上陸手続

外国人の入国及び上陸に関する基本原則

外国人の上陸審査手続図解
出入国在留管理庁HPより

外国人の入国及び上陸に関する基本原則は,入管法第2章に規定されています。

第2章の第1節では,外国人が日本の領域内に入る要件について定め,第2節では「外国人の上陸」として,日本に上陸することのできない外国人の類型を上陸拒否事由として定めています。

外国と国境を陸続きで接する国にあっては,入国とは外国人が国境を越えて領土内に入ることであり,これと別に上陸という概念を設定する実益もありませんが,周囲を海に囲まれている我が国においては,外国人が領海内に入ること(入国)と外国人が領土に入ること(上陸)を区別しています。

すなわち,入管法では,入国と上陸を別個の概念として区別し,この2つについてそれぞれ異なった規制をするという入国管理法制を採用しています。

外国人が我が国の領海内に入った段階において規制を実施することができるようにするために,「有効な旅券を所持すべきこと」という入国条件を定め,この入国条件に違反した外国人は規制の対象となるという法制になっています。

また,我が国に上陸し在留しようとする外国人については,我が国の社会と実質的なかかわりを持つことから,これを認めるか否かについて上陸のための審査を行うことが必要となります。

しかし,我が国の領海や領空内に入ったとしても,我が国に上陸することなく領海や領空を通過する外国人も存在することから,外国人からの上陸申請をもって審査し上陸の許否を決定しています。

入管法が「外国人の入国」と「外国人の上陸」を区別し,それぞれについて必要な要件を定めているのは以上のような点を考慮したものなのです。

外国人の入国の要件(入管法第3条)

外国人が我が国の領域内に入るためには,有効な旅券を所持していなければなりません。

また,入国審査官から上陸許可の証印又は上陸の許可を受けないで本邦に上陸する目的を有する者は我が国に入国することはできません。

これらの要件に違反して我が国に入国した者は,入管法第24条第1号(不法入国)該当者として我が国から退去を強制されるほか,入管法第70条第1項第1号該当者として刑事罰の対象となります。

外国人の上陸手続(入管法第6条)

我が国に上陸しようとする外国人は,原則として法務省令に定められている出入国港において入国審査官の上陸審査を受けなければなりません。

入国審査官の行う上陸審査は,不法入国者,上陸拒否事由該当者,入国目的に疑義のある者等,我が国にとって好ましからざる外国人の上陸を阻止し,公正な入国管理を行うために不可欠なものです。

我が国に上陸しようとする外国人は,上陸審査を受け,旅券に上陸許可の証印を受けることによってはじめて合法的に上陸することができることとされています。

上陸審査を受けない外国人は,合法的に上陸することができず,許可を受けないまま上陸すれば不法入国又は不法上陸に該当し,退去強制の対象となるほか,刑事罰の対象となります。

次に外国人が上陸を認められるためには,どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。

入管法(7条1項1号~4号)では,外国人が上陸を希望する場合に以下の4つの満たすべき条件を定めています。

① 旅券及び査証の有効性

有効な旅券で、日本国領事館等の査証を請けたものを所持していること(法7Ⅰ①・6Ⅰ本文・3Ⅰ①)

② 活動の非虚偽性、在留資格該当性および上陸許可基準適合性

申請に係る活動が偽りのものでなく、かつ、日本で行おうとしている活動が、入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること。また、上陸許可基準の適用のある在留資格については、その基準に適合すること(法7Ⅰ②)

③ 在留期間の入管法施行規則の規定への適合性(在留期間適合性)

滞在予定期間が、在留期間を定めた入管法施行規則の規定に適合すること(法7Ⅰ③)

④ 上陸拒否事由非該当性

入管法5条1項で定める上陸拒否事由に該当しないこと(法7Ⅰ④)

上陸の申請は,出入国港において法務省令で定める手続により行わなければなりません。

入国審査官による審査の結果,上陸のための条件に適合していると認められなかった場合には,特別審理官に引き渡され口頭審理を受けることになります。

口頭審理の結果,特別審理官により上陸の条件に適合すると認定された外国人には,直ちに上陸が許可されますが,上陸のための条件に適合しないと認定された外国人は,特別審理官の認定に服するかあるいは異議を申し出るかを選択することができ,認定に服した場合には本邦からの退去を命じられます。また,異議を申し出る場合には認定後3日以内に法務大臣に異議の申出を行うことができます。

法務大臣は,特別審理官により上陸条件に適合しないと認定された外国人からの異議の申出があったときは,その異議の申出に理由があるかどうか,すなわち,外国人が上陸条件に適合しているかどうかを裁決します。裁決の結果,「理由あり」とされた場合には直ちに上陸を許可されますが,「理由なし」とされた場合には本邦からの退去を命じられ,退去命令を受けた外国人が遅滞なく本邦から退去しない場合には,退去強制手続が執られます。

なお,法務大臣は,異議の申出に「理由がない」と認めた場合でも,特別に上陸を許可すべき事情があると認められるときは,その外国人の上陸を特別に許可(いわゆる上陸特別許可)できることになっています。

このように,我が国における外国人の上陸審査手続は,外国人が上陸のための条件に適合することを自ら十分に主張・立証する機会が与えられています。